無料オンライン小説 COLOR 悪夢の夜明け



 > トップ


平凡な日々への帰還

あれから3ヶ月の月日が流れた。

悪夢の夜は、なんとか乗り越えられた。というか、結局ジェネレーターを使うまでもなく、朝方になって停電が復旧したのだ。念のため、丸一日ジェネレーターを借りたが、杞憂に終わった。

トラブルもいくつか発生して、損害も出たが、それはさほど心配することではなかった。エアポケットみたいなもんだ。全ては順調だった。

マスコミは、例の美森市の停電事件は、さほどクローズアップしなかった。大手テレビのキー局が1回、大規模な停電がありましたという報道をした程度だった。

まあ、もうどうでもいいよ。今の僕に何も関係ない。

僕は今、東京の住人だ。丸の内の富国電気本社ビルの中にいるんだから。

いろいろ考えたが、結局僕は、叔父に勧められるまま、富国電気の取締役に就任することにした。もちろん、ITコンサルティングにも籍は残したけど、会長職に退いて、代表権は佐藤に譲った。

叔父さんに、ブルーアースプロジェクトの出資をしてもらう形になったし、佐藤に代表権を譲ることは決めていたから、ITコンサルティングの経営基盤をさらに強くするには、叔父さんの出した条件を飲むのが一番だと思ったからだ。

さまざまな困難を乗り越え、たどり着いたゴールは、結局、僕の親族が思い描いたゴールだった。迷う部分がないといえば嘘になるけど、これでいいんだと思う。

もともと僕や京介みたいな大学も出ていないギャング上がりの人間が経営を握っていたら、いくら実績を重ねていても、これ以上は飛躍できないからね。

しかし、この会社に今ひとつなじめないな。会社というよりは東京になじめないのかもしれない。そもそも、8月の下旬に上京してきたのだがいけなかった。

話には聞いていたけど、東京はヒートアイランド、というよりも灼熱地獄という言葉がピッタリだった。


PR広告
Copyrights (C) 2005 COLOR. All Rights Reserved