「やっぱ女の子を家に呼んで口説くんなら、平井堅とかその辺がいいんじゃない?」
「あとでCD見る時、教えてくれよ」
くだらない話をしながら歩いていると、道路を挟んで右手に三番館が見えてきた。
「マ、マジ? 三番館ってあんな豪華な店だったっけ?」
少し不安そうな顔をして、ター坊が僕に話しかけてきた。
「見た目は豪華だけど、勘定はかなりリーズブナルだよ」
「そうなんだ。安心した。ちょっと手持ちの現金がないからね。今度内輪のミーティングででも使おうかな」
三番館の前まで来ると、街はすっかり暗闇につつまれていた。店の看板にも明かりが灯っている。
僕がドアを引いて店に入ると、ター坊も後に続いた。僕らに気づいたマダムが奥から歩いて来た。
「いらしゃいませ。2名様ですか?」
「2名ですけど、僕らタバコ吸いたいんで奥のオープンガーデンでもいいですか?」
「大丈夫ですよ。じゃあ、こちらへ」
マダムは、笑顔で右手を前に差し出すと、いそいそと歩き出した。
他の客のテーブルを横目に歩き、中庭入り口のドアを開けるとライトアップされた噴水が目に飛び込んできた。中庭のそこかしこにテーブルがあって、僕らは噴水の近くのテーブルに案内された。
「じゃあ、メニューをお持ちしますので、少々お待ち下さい。」
マダムは、そう言うと、店の方に戻っていった。 |
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