10分過ぎても、ター坊はトイレから出てこなかった。
この世に男のトイレタイムを待つ事ほど、切なく、悲しく、くだらない事はない。
でも、沈んでいく夕日を一人で見るのも悪くない。現実離れした空間から眺める夕日は妙にリアリティがある。生きてることを実感できる。
一体、あとこの夕日を何回見られるんだろうか。
そうこうしているうちに、外は、黄昏に染まり始めていた。
日の入りの時間帯の変化は速い。とはいっても、ター坊は異様なくらい、トイレに長居してるようだ。
大の方? いや、そんなことはどうでもいい。
スーツの上着からタバコを一本取り出して火をつけた。
毎日、一分一秒を争う仕事をしているせいか、待たされるのはどうも好きじゃない。
「俺の人生が、彼の腐れバナナに食い尽くされる!」
「俺の人生が、彼の腐れバナナに食い尽くされる!」
あ〜ちきしょ〜いらいらするぜ。
まあ、でもよく考えると、十数年ぶりに再会した友人のトイレも待てないほど、小さな人間になっちゃいかんでしょ〜う。それこそ「ケツの穴の小さい男だ」ぜ。Fuck Men!
独り言をつぶやきながら、向かいのビルを見上げると、ゴールドに輝いていた。地元でも有名なエグゼクティブの集まるビルだ。 |
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