スタッフルームに入るとコーヒーの香りがただよっていた。
ペコちゃんが、コーヒーメーカーをセットしてくれてたんだろう。
もっとも、毎日朝一で出勤してくるヤツなんてこの会社にはいない。おまけにコーヒーを入れてくれるなんて気の利いたやつはいないから、必然的に彼女以外に考えられないけど。いずれにせよ、いいスタッフに恵まれたと思う。
最近は、この香りをかぐと、仕事の意欲がわくようになった。
タルい毎日を送っていたガキの頃の僕が今の僕を見たら、見事な変身ぶりにきっと驚くだろう。いや、きっとギャングなんてとっととやめて、真面目に大学を目指していたカモ。
もっとも、真面目に大学なんて行ってたら、今のような生活はできなかっただろうな。
ガキの頃に真面目に学生やってた連中は、社会に出て、不景気の波に次々と飲まれて転落していった。
それなのに、さんざっぱらふざけて、ぷらぷらしてた僕が時代の寵児と言われるようになるなんてな。ほんと、わけわかんない世の中だ。
長机の方を見ると、技術顧問の康市が、ヤンマガを読んでいた。
足を机の上に投げ出してニヤニヤしながらページをめくっている。朝からご機嫌なこった。もちろん、僕が出勤してきたことも全く気づいていない。 |
|