また今日も夢を見た。
死んだ父親が、酒に酔いながら、暗闇の向こうで叫んでる夢だ。
「人生は振り返るもんじゃない。感傷にひたってる時間なんてないぞ。上をめざして必死にもがいて這い上がれ。のんびりできるのは、自分に与えられたチャンスをすべて使い尽くして、やることを全て終えた老いぼれだけだ」
「ヤバ……」
息苦しくて目が覚めた。握り締めた手のひらに汗がにじんでいる。
また、ソファーで寝てしまった。どうやら、夢を見ながら泣いていたみたいだ。
まぶたが少しはれぼったい。体を起こした後、テーブルの上のグラスに手を伸ばす。
冷たい。ロックのバーボンは、すっかり氷が溶けてしまっていた。
そのまま立ち上がって、キッチンのシンクにグラスの中身を捨てた。
冷蔵庫からミネラルウオーターのボトルを取り出し、一気に飲み干す。
けだるさが去り、鋭い刃物に触れているような、ギリギリの感覚がもどってきた。
そう、それでいい。僕はこの感覚の中でしか生きられないんだ。 |
|