まあ、それを言えば、僕がギャングやってた頃から、この国はわけわかんなくなってたけどね。

ちょっとおかしいのが完全に狂ったってとこだ。
いい具合に壊れたって感じ？　

僕が子供だったころの出来事は、全部幻想になった。

世の中には、家族や学校や社会全体が、まともに機能してた頃の幻想を、いまだに追いかけてるやつもいる。

気持ちはよく分かるけど、現実を見たほうがいい。
よく見てみな。

僕達に「道徳」なんて言葉を教えた年寄りは、やりたい放題だろう。
ゴミのポイ捨てや駆け込み乗車なんてのは当たり前。罪悪感のカケラもない。

もっとタチの悪い奴は、社会的地位を利用して、まっとうに働いてる連中から、億単位の金を平気で抜いてる。若い者を批判できるヤツなんて一人もいないと思うぜ。

とはいえ悪いことばかりじゃない。チャンスはごろごろころがってる。

引きこもりでもニートでも、パソコンとネットと、ちょっとだけ時代の先を読むセンスさえあれば、億の金を稼げる時代になった。

それが今という時代の現実だ。その中で俺は生きてる。そしてチャンスをつかんだ。あとは、上をめざしてさらに昇るだけだ。そう、それでいい。

ハンドルを握りながら、朝の光に包まれていると、テンションが高まってくる。

最高の気分だ。このまぶしさと一緒に、世の中の頂点に登りつめるんだ。

よけいなことは考えなくていい。振り返らなくていい。オヤジだって言ってたじゃないか。「人生は振り返るもんじゃないんだ」って……。