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「へ〜〜。そうなんですか」

「そうさ、世間はそんなもんだよ。いわばF1のレースと同じようなものだ。実はリーマンショック以来、自動車業界もガタガタになってね。ウチも同様に自動車不況のアオリを受けて経営もかなり厳しい状態なんだ。オヤジさんも泰蔵君も人前では弱音を吐かないけどね」

「そうだったんですか…」

「今夜は僕も見に行くから、頑張ってくれよな」

二人の話が終わりしばらく沈黙が続くと、突然ドアが開き泰蔵が眠気眼をこすりながら入って来た。

彼は、椅子に座ると寝癖だらけの頭をかきながら話し出した。

「今日は、栗原と斉藤さんで木村屋旅館の送迎用のバスを取って来て整備してくれ。オレっちは、伝票の整理をやるから。あと、木村屋旅館に行くついでに、ウチのオヤジさんを青田病院まで送って行ってくれるかな?」

「分かった」

「ありがとう。9時過ぎに準備して家から出てくると思うから宜しくな」

話が終わると、泰蔵は自分の机に向い、パソコンの電源を入れると伝票の整理を始めた。

僕は、再び窓に映る田園風景を眺めながら思いに耽った。

田舎の朝は、やっぱいいな。

何か、こう、清々しい。

東京にいる時は、何かギスギスした感じだったな。

事務所の壁掛け時計が9時を回ると、泰蔵のオヤジさんが事務所に入ってきた。

「おはようございます」

泰蔵は、オヤジさんの顔を見ると僕らに向かって話し出した。

「じゃあ、栗原と斉藤さん。宜しく」

僕と斉藤さんは、オヤジさんを連れて事務所の外に出た。

斉藤さんとオヤジさんは、日頃この会社であまり使用してない、軽ワンゴンの方に向かって歩いている。

そのワゴンは、発展途上国などで走っているような、本当にボロボロであちらこちらがへこんで、サビだらけのとってもデンジャラスな車だ。

しょうがないので、僕も二人の後を歩き。斉藤さんが、運転席に乗り込むと僕とオヤジさんも後部座席に、隣り合わせて座った。


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