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京介が、コンクリートの壁を蹴った。だが、壁は全く動かない。
「キョウちゃん。まあ、そんなに慌てなくてもいいじゃない」
ヤスオが、なだめるように言った。だが、京介は機嫌をなおす素振りをみせない。
「チョイ待ち〜。だから、俺があれほど、帰ろうとしたのにお前らが、先に行くからこんな事になったんだろうがよう。ってか、お前ら正直どうするの?ア〜ン、ここで、3人でミイラにでもなろうってか。賢一、お前も黙ってないでなんか言ってみろ」
「たしかに、ミイラは勘弁だな。でも、抜けられる方法はあるんじゃないの。っていうか、壁にぶら下がってる小さな彫刻怪しくねぇ?」
「何?彫刻……」
京介は、壁に飾られた、無数の彫刻を見つめたまま黙り込んでしまった。
ヤスオが、石台の表面をまじまじと見つめながら、僕に言った。
「ケンちゃん、外国語は得意じゃないんで、正確なことはわからないけど……。ここに書かれている文章の意味は、壁の彫刻をこの石台の上に置いたら、入り口が開くって事じゃないかな」
「僕もそう思うよ。でも、下の方にドイツ語かなんかで意味不明な文章が書いてあるだろう。それって、ペナルティーじゃないの?」
「かもしれない……。でも、なんとかしてここを抜け出さないといけないよね」
「入り口のドアが開いたら、今度こそ戻ろう。ここは、僕達だけじゃ手に負えそうにもない。一旦、会社に戻って出直さないと駄目だな」
「そうだね。僕らだけじゃ無理だね」
会話が終わると、三人とも壁の彫刻を見つめたまま黙り込んでしまった。
しばらくすると、少し息苦しくなってきた。室内の酸素濃度が減っているのだろう。
時間がない。あと、8時間もここに閉じ込められたらアウトだ。
しかし、誰がこんな仕掛けを作ったのだろう。部屋を見回してみた。
最近の物じゃないな。彫刻もかなり年期が入っている。
それにしても、この部屋はまるでドイツの収容所みたいだ。
月が満ち、あふれ出した太陽がもたらした恵みが富を築き道を開くか……。
全く分かんないな。
おそらく、彫刻にセンサーが仕込まれていて、石台に置くとそれが反応する仕掛けになっているんだろう。
もし間違えたら?
その時はどうなるんだろう。そのまま命を落とす可能性だってある。どうしたらいい?
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