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「やっぱ最高だな。高速回転向けのエンジンだから、アクセルベタ踏みしてもガンガン走りやがる。すっきりしたぜ。とりあえず降りて、羽田へ向かうか」
ほどなくして、高速から降りて京介は、一般道の脇に車を止めた。
高速のスピードに慣れた後なので、車を停めると時間が止まっているような錯覚を覚える。彼は、タバコをふかしながら僕に話しかけた。
「もう、3時か……」
「あと、30分くらいたったら羽田に向かわないとな」
「ああ、そうだな…」
「そう言えば、お前と、ここ数年まともな会話してなかった」
「なんだよ、突然」
「いや、顔あわせたら、仕事の話ばっかだったなと思って」
「頑張ってきたしなあ。ギャング上がりの俺たちが、こんなところまできた」
「ああ」
「俺は、最高に幸せだよ。仕事は楽しいし、家族もできたし」
京介の横顔は、本当に幸せそうだった。でも、僕には少し痛く見えた。
「お前は、寂しくないのか?」
「どういう事?」
「オヤジさんとオフクロさんが死んで、天涯孤独だろうがよ」
「寂しいにきまってるさ。でも、不思議な事にあまり思い出さないんだよ」
「全く、お前って言うヤツは薄情な奴だな。この件が無事に片付いたら、例の理香って娘と結婚した方がいいよ。」
「そうかな?」
「ああ、そうだ。そうともよ〜。この国で1人で生きていくのは何かと切ないだろう?盛大にお祝いしてやるよ。いい娘じゃないか。彼女と一緒にいると、お前も安らいでるみたいだし」
「まあ、そうだね……。前向きに検討しとくよ」
「ちょっと外に出てみないか?」
京介に促されて車外に出た。少し明け始めた夜の中に、夜景が広がっている。
自分達がどこにいるのかも分からないけど、この街は今日も輝いている。
闇夜に浮かび上がる巨大な広告やネオンを見つめた。言葉なんていらなかった。
京介は、きっと俺がいるから寂しくねえぞって、伝えたかったんだと思う。
もちろん、家族のことを一番大事に思っているには違いない。天秤にかけるわけにはいかないほど、僕との関係を大事に思ってくれているのだ。
何も言わないのに、そのことが伝わってきた。僕も言葉にはできないほど嬉しかった。
僕らは、どちらかというわけでもなく車に乗り込むと、高速に乗り、羽田空港に向かった。
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