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「ケンちゃんは、富国電気で、どんな仕事しているの?」
「僕は、商品管理室で、いろんな商品のデータベースを管理しているんだ」
「ふ〜ん、そうなんだ。あたしは、派遣会社から富国電気の秘書課に派遣されたんだけど、雑用ばっかでね……」
「へぇ〜。雑用って何すんの?」
「コピーを取ってファイリングしたり、会議室にコーヒーを持っていったり、重役達のお使いなんかやるの」
「そうか……。でも、まだ入ったばっかでしょ?しょうがないんじゃないの?」
「そうだね。でも、大きな会社に入ったら大きな仕事ができて、キャリアアップ出来ると思ってたから……」
「みんな、そうじゃないの。社会は自分の都合のいい方には動いてくれない。だから、ひたすらもがいているんだ。でも、少しずつ努力して小さなラッキーを集めると、大きなチャンスに巡り会えるかもしれないよ」
「その、小さなラッキーって、どれくらい集めればいいの?」
「それは、わからないよ。1回でも1万回でもチャンスが来る奴には必然的に来るんじゃないの……。しかし、うちの会社は派遣取り過ぎてねぇか?まあ、理香ちゃんみたいな頑張ってる子にチャンスが回ってくるんだから、それもアリかな」
「ケンちゃんと話してたら少し元気が出てきた。また、明日から頑張るよ」
その時だった。店の入り口のドアが開いて、二人組みの男が入って来た。
彼らは、カウンターの席に座らず、僕らの後ろのボックスシートに陣取った。
なんとなく怪しい雰囲気だったけど、別に気にも留めなかった。
場所が場所だし、二軒目で飲みなおしってところか、なにかの商談かってところだと思ったからだ。
それから、しばらく理香と会話を楽しんでいると、突然誰かが僕の背中に小さな筒の様な物を押しつけた。
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