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中には取引先も混じっている。普段だったら、始末書ものだが、かまってる場合じゃない。
僕は今、富国電機の存続に関わる問題の最前線に立ち向かっているんだ。
「ちょっと、あんた」
社員証のカードを首から下げていないせいか、不審者と思われたらしい。後ろから警備員に呼び止められた。かまってる暇はない。カウンターに走り寄ると受付嬢に話しかけた。ヒュー、なかなかキュートなお姉さんだ。
「スミマセン、庶務課ってどこですか?」
「え、ええ?…」
受付嬢は、パニくった声をあげた。無理もないが、事情を説明している暇はない。あわてて、ポケットに入れていた社員IDカードを取り出した。
「緊急対策課の栗原です。庶務課に緊急の案件があるんです」
僕の後ろに迫っていた警備員は、社員IDカードを見ると、気まずそうに回れ右をして、玄関の定位置にもどっていった。
「庶務課はどこにあるんですか?スイマセン、緊急なんです」
「は、はい、地下二階の奥の方になっております。こちらの見取り図をご覧ください」
彼女は、そう言うとテーブルの上にある見取り図を指差した。
「ありがとう」
「緊急対策課の栗原さんでしたね。庶務課にはこちらから内線で連絡を入れておきます」
「サンクス。え……と、宮原さんね。お礼に今度食事でもおごるよ。よかったら連絡ちょうだい」
僕は、彼女に名刺を渡して、再びエレベータに飛び乗った。急いで、B2Fのボタンを押す。驚いた彼女の表情が、閉じるエレベーターの扉でフェードアウトしていく。同時にエレベーターは、地下へ降りはじめた。
一階のロビーと違って、地下二階は、ずいぶん静かだった。廊下は、人一人見当たらない。エレベーターを降りると、そのまま廊下を歩いて、庶務課の前まで進んだ。そして、ドアをノックした。
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