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「そうだったんだ」
「ああ、そうだ。お前の親父さんは平和で豊かな国が造りたい。そう思って富国電気を創設したんだ。しかし、お前の叔父の孝三郎は、戦後の高度成長のなか富に目を奪われ金儲けのためなら何でもやる、金の亡者になってしまった。
義明は生前ワシの所に来て、このウィルス捕獲装置を置いていった。そして、いつの日か我が息子が健全で誠実な息子に育った暁にはこれを渡してくれといっていった。なつかしい、ほんとになつかしいのお……さあ、それを持っていきなさい」
「失礼します。御前、この者は、如何様に?」
ふと気付くとゴリがうつろな表情をして兵隊達に連れてこられた。
「どうやら、まだ、麻酔がきいているようじゃな。それからお前にもう一つ渡しておくものがある」
藤田はそう言うと部屋の隅にある大きな金庫を開けた。そして、小切手帳を持って来てテーブルの上に置いた。
「この小切手はお前の好きな金額を入れて使ってくれ。お前なら間違った金の使い方はしないだろう。どうせワシはもう長くは生きられない。これからはお前の様な若者がこの国を豊かにしていかなければいけないからな」
藤田は少し目に涙を浮かべて話した。
「そうですか……。じゃあありがたく頂きます。あ、それから爺さん。いや、藤田さん。また、落ち着いたらここに来てもいいですか?今度は手土産を持って」
「ああ、かまわない。また、お前の親父さんの話をしてやる。それ、とっと帰れ。人生はもの凄いスピードで駆け抜けて行くもんだ。こんなとこで油を売っていると、すぐワシ見たいな爺さんになってしまうぞ。そうだ、ふもとまでヘリコプターで送ってやろう。庭の先のヘリポートまで行きなさい。そこにいるパイロットに指示したら後は連れてっていってくれる」
「ありがとうございます。よし、じゃあ、康市と京介で、そこでラリってるゴリをヘリポートまで運んでくれ」
「賢一、俺はパスしたいんだけど。ねえ康市」
「ですね。こいつ何か臭いし、おまけに麻酔がまだ効いているみたいで口からヨダレ出してんすけど」
確かにどうしょうもないけど一応上司だからな。
「じゃあ、俺が連れて行くわ。あと、チェックして。忘れ物なんかがないようにね」
僕らは藤田氏に深々と頭を下げ、別れの挨拶をして部屋を出た。
さすがに大豪邸なのでヘリポートに着くまでかなりの時間がかかった。だが、何とかたどり着けた。
ヘリポートまで来るとゴリは、すっかり麻酔から醒めたようで、いつもの機敏な動きを取り戻して素早くヘリに乗り込んだ。
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