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これから、無法地帯に飛び込もうとしているのに、まるで遠足にでもいくみたいな余裕ぶっこいた表情だ。僕はすっかり呆れてしまった。やっぱりこいつ、何も考えてないに違いない。
「栗原、準備できたか?」
「ハ、ハイ。でも、武器とか何か装備していかなくていいんですか?」
「そんなもんは気にしなくてかまわん。とりあえず俺を信じてついて来い」
「着てた服は?」
「リュックにつめておけ。時間がない。行くぞ」
「は、はあ……」
何が俺を信じてついて来いだ。ヤバクなったらソッコーでバックレてやっからな。いや、今すぐ逃げ出しちゃおうかな。こいつのことだ。何も考えてないに違いない。
脳みそまで筋肉でできた、毛深いオッサンと心中するなんて、まっぴらごめんだ。
「栗原、もたもたすんな。間違っても逃げようなんて思うなよ」
ヤベ、ばれてる?ゴリは納屋の戸を開けるとそそくさと外に出て行った。仕方がない。腹をくくろう。僕も慌ててリュックを背負うと、ゴリの後を追いかけた。
外に出ると、まだ僕らの周りは闇に包まれていた。腕時計のライトのボタンを押すと液晶ディスプレイにうっすらと数字が浮かび上がった。AM:4:17か、どうりで眠いはずだ。
「村上さんに、挨拶していかなくていいんですか?」
「朝になったら、そのまま出て行くって話をしてある。それに余計な話をして、村上さんに万が一のことがあったらどうする?」
「そうですね。先を急ぎましょう」
「栗原、しつこいようだが、ここからは俺の指示通りに動いてくれ。確実な勝算があるわけじゃないが、俺は一応これでも元自衛官だ。
戦闘に関しては、お前より訓練を積んでるし、ノウハウを身につけている。ここから先に待ち構えているのは、世界の戦場で傭兵として生き抜いてきた猛者ばかりだ。
そいつらの前では、一瞬の躊躇が命取りになる。詳しいことを説明しないのは、お前に余計な恐怖心を植えつけて一瞬の判断を鈍らさないためだ。不安でたまらないだろうが、分かってくれ」
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