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「と、い・う・こ・と・は、今日のわたくしめのミスはチャラですね?」康市が僕に申し訳なさそうに問いかけてきた。
「んなわけねえだろ。とりあえす、食券買ってこい。全員コーヒーだ。一人一人挨拶して、ちゃんとコーヒー配れよ」
康市は、僕から千円札を二枚受け取ると、席を立った。
「とりあえず、紹介しておこうか。こちらが、ファーストデザインさんで、こちらがマックスサーバーさん、えーと奥の方にいる方がディープ・アイズさん」
僕が紹介すると、京介と佐藤は、みんなと名刺交換をはじめた。
「しかしまあ、やるもんだね。これが大人の世界だな」名刺交換を終えた京介が言った。
「ほんとの勝負は戦に突入する前に、自分達が勝つ為の準備をしておかないといけないんだ。はっきりいって、戦う前に勝負はついている。それが世の中の常だ。
それに、僕たちが単独受注したとして、これだけ巨額な金と人が動くんだったら、手が回らないだろう? 利益を独り占めしようとして自爆するよりも、ここは全員を味方につけた方が賢い。今回のことで恩を売ることで、業界全体に幅を利かせられるしな」
「そりゃそうだな」京介は、何度もうなずいた。
佐藤が各企業の担当者と名刺交換して、僕の横に戻ってきた。
「賢一さん、これでまたワンステージ上に行けましたね」
「佐藤君、僕が今日のプレンゼンで言ったこと覚えてる? 大義のない戦に勝ったところで、そいつは、ならず者か逆賊として、年表に載るだけだってやつ」
「は、はあ?」
「君は優秀な人間だ。でも、お金を手に入れることを最終的な目標に定めない方がいい。人は金を手にすると、気づかないうちにそんな考えに陥ってしまう。その屈折した思想が、いずれ君自身の身を滅ぼすきっかけになるかも知れないよ」
「でも、僕らは何のために働いているんですか?金をもらわないと、会社だって成り立たないじゃないですか。きれいごといってもビジネスなんて、結局は金儲けですよ」
「僕は今までいろんな人間に会って来た。金が万能だと思っているやつも多い。でもね。この世は全てお金が解決してくれるって考えてるやつは、たとえ金を手に入れても、貧しいままだ。
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