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店に入ると食券の自動販売機があった。なるほどコストを削減してるわけね。

「みんな何飲む?」

僕がそう言って、千円札を投入すると、みんな無言で自分の好きなボタンを押した。男同士の場合、こういう時は始めに声を出した奴がおごらなければいけない風潮がある。大和男児の伝統と言ってもいい。

おそらく、大和撫子&ビューティークインには分からないだろう。一生ね。あーあ、男は、リーダシップをとったり、年長者になるとお金がでていくから、いやなんだよね〜。

チケットを持って全員でテーブルにつくと、ウェイトレスのお姉さんが来て食券を受け取って、厨房の方にオーダーを流した。

飲み物を待つ間、みんなが無言で誰とも目を合わそうとしなかった。何かピリピリした空気が流れている感じだ。

「じゃあ、プレゼンの前にもう一度段取りを確認しておこうか。康市、もう一度プレゼンテーション資料を確認してくれ」

「はい」

康市は、そう言うと、資料の入ったダンボールの中をチェックし始めた。

僕の一言で、緊張がほぐれたのか、みんなも少しずつ会話を始めた。

段取りを確認していても、時間が気になる。つい、後ろの壁掛け時計が気になった。周囲には、今日のプレゼンに参加するらしい、企業の代表らしき人物がたくさんいた。

できるだけ他の席の客と目を合わせないようにしていたが、後ろの壁掛け時計を見た時、壁際の席の女性に目が吸い寄せられた。

「うそだろ?」

麻美だった。

間違いない。メイクでずいぶん雰囲気が変わっているが、麻美に間違いなかった。壁際の席に、グレーのスーツを着た麻美が座っていた。

僕はしばらく声が出なかった。いや、この状況を上手く飲み込めなかったんだと思う。


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