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「それじゃあ、レースを始めるぞ。俺が、このライトを頭の上から振り下ろした瞬間に走り出してくれ」

2台とも、クラクションを鳴らし早く始めろと急かしている。

「じゃあ、しょうがねえな。ヨシ、行くぞ」

彼は、懐中電灯を強く握り締めると頭上まで振り上げ、思いっきり振り下ろした。

その瞬間、2台の車がタイヤを掻き鳴らしながら白煙を吐き出し走り始めた。

スタートは若干、泰蔵の方がリードしているように見える。

しばらく経つと、彼らの車はみるみるうちに暗闇に吸い込まれていった。

僕は、2台の車を見失うと同時に横でスタンバイしているエグ坊主の様子を伺った。

彼も、やはり緊張しているようだ。

ハンドルを握り締めたまま、前方を直視している。

僕は再び視線を正面に戻すと、昼間、泰蔵のオヤジさんと話した事を思い出していた。

勝たなければ。何が何でも勝たなければ。

ここで、勝たなければ一生浮かび上がる事は出来ないだろう。


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