斉藤さんは、シートベルトを締めるとエンジンを掛け、ゆっくりと車を走らせた。
どうでもいいが、僕の座席の天井の所にガムテープが貼ってある。
おそらく、穴が開いているのだろう。
しかし、整備屋って本当に凄いな。
こんな、オンボロでもエンジンはキチンと動いている。
そんな事を考えながら、窓の外を見ているとオヤジさんが話しかけてきた。
「栗原君。今日、泰蔵と一緒にレースをやるんだろう?」
「ハイ。いや、成り行きで何かこうなっちゃて…」
「そうか。う〜ん…」
彼はそう言うと、しばらく黙り込んでしまった。
そして、また僕に向かって話し始めた。 |
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