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連日、深夜まで特訓して疲れが溜まったせいか、今日は朝から食欲がない。

時計を覗き込むと、もうすぐ8時になるところだ。

急いで歯を磨き、仕事着に着替えると部屋を出て車に飛び乗った。

渋滞を掻い潜り、関口自動車に辿りつくと、車を停め事務所へ向かう。

事務所のドアを開けると、斉藤さんが一人で椅子に腰掛け、スポーツ新聞を見ながらタバコをふかしていた。

どうやら、泰蔵は、まだ来てないようだ。

「おはようございます」

「おはよう」

斉藤さんは、新聞を見つめたまま、さりげなく挨拶したので、僕はテーブルの上にカバンを置き、窓に広がる田園風景を眺めた。

すると、突然後ろから斉藤さんが話しかけてきた。

「栗原君。今日の夜、レースやるんだろう?」

振り返ると斉藤さんは、新聞を見ながら話していたので、僕も窓の外を見つめながら話した。

「ハ、ハイ。でも、どうして?」

「いや、こんな小さな街だから、噂はすぐに広まるよ」

「ハハ、そうですね。いや、話の流れで何かレースやるはめになっちゃって…」

「そうか。でも、これはいいチャンスだ」

「え、どういう事ですか?」

振り返ると、斉藤さんは新聞を置き。タバコの火を消しながら僕の方を見つめ話し出した。

「簡単に言えば、今夜のレースで泰蔵君と栗原君が勝つと、この会社の売り上げが伸びるってことさ」

「売り上げが伸びる?」

「今日のレースは、車好きなヤンチャ小僧から一般の人達まで、みんなが注目してるからね。君達が勝ってくれれば、公認チューニングやパーツのオーダーも入るし、一般の人達も車検や修理にウチを使ってくれるだろう。以前、泰蔵君がレースで勝った時も売り上げが伸びたよ」


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