「へぇ〜。そうなんだ」
「明治神宮の森も全部、大正時代に植林されたものだよ」
「凄いね」
「まあ、当時の国家プロジェクトだからね」
二人で、話しながら歩いていると、明治神宮の大鳥居の前までたどり着いた。
壮大な森に包まれたこの空間は何か落ち着くな。
どことなく、美森の風景にも似ているような気がする。
それから僕らは、明治神宮を参拝し、原宿駅まで戻ると電車に乗り込み帰ることにした。
マンションに辿り着くと、もう日も落ち7時を回っている。
リビングの照明を点け、テレビの電源を入れると衆議院選挙速報をやっていた。
案の定、政権与党である民自党が野党第1党の主民党に300議席近くとられそうだ。
まあ、そりゃそうだわな。
あれだけ、むちゃくちゃしてりゃあ、それはそうなるわな。
中でも、郵便局を外資系ファンドに売却しようとしたのは酷かったな。
でも、これで政権が飛んだら、僕の裁判にも影響するのかもしれない。
理香とデートする前に二人で選挙に行くべきだったかな。
「ケンちゃん。どうしたの?」
「いや、別になんでもないよ」
理香に事情を説明したいところだが、司法取引の話は他言しない方がいいよな…。
「民自党、負けて当然だよね。派遣でウチラみたいな人間がどれほど苦しんだか思い知ればいいんだよ。ねぇ〜。ケンちゃん」
「ああ。そ、そうだね…」
理香の気持ちは痛いほど分かるが、僕はそれどころじゃない。
この日は、遅くまで選挙速報を見て眠りについた。 |
|