無料オンライン小説 COLOR 悪魔の抱擁



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彼の、指示通り戻ろうと立ち上がると、刑務官がまた僕の房に連れて行き、中に入ると、また入り口の鍵を閉めた。

それから、ぼ〜っとしていると昼食の時間が訪れた。食事をすませしばらくすると、また刑務官が現れて、弁護士が接見したいというので、接見室に行く事になった。

接見室に入ると、ガラス越しに50歳前後のスーツを身にまとった男性が座っていた。

彼は、僕が椅子に腰掛けると同時に、ゆっくりと話し始めた。

「この度は、とんだ災難に巻き込まれてしまいましたね。私は、あなたの部下の佐藤氏からご紹介を受けた、沢木重利という弁護士です」

「ああ…。佐藤が言ってた弁護士さんですか」

「はい、そうです。栗原さん、あなたはまだ弁護士を選任なされてないようですが…。どうでしょう、私で宜しければ、この案件を担当いたしますが。」

「はい、よろしくお願いします」

「わかりました。あとで、弁護人を選任するための書類にサインをいただきます。それで、栗原さん。あなたの罪状を見せてもらったのですが…。まあ、オプションでくっつけられた罪状を外して、情状酌量または、執行猶予を狙うという線でいきたいのですが。宜しいでしょうか?」

「刑務所に入らなくてもいいという事ですか?」

「はい、まだ断定できませんが…。あなたは、初犯でありますし。それに経済犯罪っていうものは、案外刑が軽いものですから。だから、政治家や金持ちは悪い事をしても刑務所に入らなくて済むんですよ」

「なるほど。そう言われれば、そうですね。さすが佐藤が紹介してくれた弁護士さんだ」

「実を言うと、私はヤメケンなものでして」

「ヤメケン?」

「簡単に言うと、検察OBって事です。そう言うわけでして、彼らのやり口もある程度は把握できています。そこいらのマチベンよりは、頼りなると思いますよ。ところで、栗原さん。あなた、ちゃんと食事はとっていますか?」

「はい、今のところはちゃんと食べています」

「そうですか、それはよかった。ここでは、まず食事がとれなくなって、意識がモウロウトしたところを検察に誘導されてしまう人が多いんです。そうですか、食事が出来るのならよかった」

「なるほど、そういう事なんですね」

「では、栗原さん。私は今日のところは、これで失礼します。それで、また、明後日やって来ますので。その時に、これからの取り調べと公判について作戦を練りましょう」

彼は、そう言うと席を立ち。そそくさと、接見室を後にした。

僕は、また房に戻ると食事をすませ。点呼が終わると布団を敷き、横になった。

今日は、弁護士と接見し安心したのだろうか。昨日よりは、すぐに眠りに就く事が出来た。


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