無料オンライン小説 COLOR ラスト・コンタクト



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「縁起でもないこと言うなよ」

「まあ、とりあえず負けるつもりはねえけどな」

僕らは、無言で笑みを交わすと、勘定を済ませて店を出た。

車に乗り込んでエンジンをかけると、京介が僕に言った。

「とはいえ、今回はかなりヤバイ話になりそうだ…。で、いっぺん、この車でアクセルべた踏みしたかったんだけど、首都高流していい?」

「ああ、いいよ。スピード違反でオービスに写真取られても、命がなけりゃ後日出頭も出来ないだろうからな」

「チキン(弱気)だねえ。レッドゾーン突っ込む感じでいきましょうよ」

彼は、そう言うと駐車場から車を急発進させた。

とりあえず浜松町まで下の道を流し、汐留ジャンクションに乗り、爆走した。

京介は、何も語らずただ前を見て運転していた。スピードが上がるたびに、フロントガラスの視野が狭まっていく。

僕は、対照的に、窓の外を流れる景色を見ていた。

ここ数年の間に、本当にいろんな事があった。そして、僕は確実にこの町に飲み込まれてしまった。

いや、ゆるみきった日本の社会に埋もれてしまっている。

今の日本国の経済不況の元凶は、日本人の不健全な精神だ。

金になれば、嘘をついても犯罪をやってもいいという考えが蔓延している。

だから、消費者の購買意欲は失せ、投資家は日本市場に投資しない。

そして、このような悪循環が無限連鎖を起こして止まらなくなってしまっている。

僕と京介も例外ではない。今、走っているこの車ようにもの凄いスピードで、日本のゆるみきった社会に飲み込まれている。

もはや、政治家がこの国をコントロール出来ないようになってしまった。

ネバーエンディングストーリーを書いたミヒャエル・エンデが、経済は、愛の領域だと言っていたらしい。たしかにそうかもしれない。本来、経済的な富は、個人だけではなく、周囲の人も幸福にするはずなのだ。

だとしたら、この国は金どころか人間としての愛もなくしてしまったということか。

「なに、たそがれてんだよ」

「あ、いや別に」


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