「ああ、実は、昨日かなりヤバイ奴に出会ったんだ」
「ヤバイ奴?」
「歳はオレラとタメくらいなんだけど、マフィアのボスなんだ」
「またかよ。毎回毎回、面倒な話持ってくるよな。それで、今度はどんな問題持ってきたんだ?」
美森で理香に出会い、上原和輝とやり合った夜の事を京介に説明した。もちろん、上原がCOLORのことを知っていて、情報と引き換えに体のよい脅迫を仕掛けてきたことも話した。京介は、しばらく目を閉じて考えこんだ後、また口を開いた。
「お前、ハニー・トラップに引っかかったんじゃないの?」
「ハニー・トラップ?」
「ああ、ハニー・トラップだ。つまり、美人局って事。あらかじめ、女をお前に接触させて、後から甘い汁をしゃぶろうって魂胆じゃないの?」
「そうかな……」
「間違いないと思うがな。最近は、裏社会の連中も知恵をつけてきて、株なかんで儲けてるんだ」
「ヘェ〜、最近は、闇の住人も結構健全なんだね」
「違うよ。バカ、バカ、バカ。お前は、全くおバカさんだね〜。つまり、こういう事よ。例えば、闇の住人が、投資ファンドを通して新興市場のベンチャー企業の株を取得する。そう、20億程度買えば筆頭株主になり、企業オーナーになれるってわけだ」
「なるほど、株の配当金で飯を食ってるのか」
「だから、話は最後まで聞けっつうの。で、続けるぞ。奴らは、実質上、ファンドを経由して企業買収を済ませたら、会社の資産を全部取り上げた後、株を売却して売り抜けてるんだ。つまり、最初に、善良な安定株主で、健全な投資家であるように見せて、詐欺行為をやって儲けているんだ」
「そうか。そうなんだ……」
「お前の場合はちょっと違うケースになるみたいだけど、奴らはお前から情報や利益を引き出そうとしてるんじゃないかな」
「そうか、わかった。じゃあ、上原には今後連絡しないようにするよ」
「いや、しばらく泳がせよう。上原のことはともかく、その理香って子の事好きなんだろう?」
「ああ……」 |
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