なるほど。つまり、理香を連れて帰るなら僕を殺すって事か。
ん?今、彼は僕の名前を呼んだよな。彼は僕の事を知っているのか?ひょっとするとここを脱出するチャンスがあるかもしれないぞ。僕は急に冷静さを取り戻した。
「まあ、落ち着きましょう。要は、金を用意したらいいんでしょう?」
男は態度を軟化させた。
「はい、でも今すぐ用意していただきたいんですよ」
「今は、無理ですよ。第一、もう金融機関が閉まってる時間でしょう。5千万のキャッシュを今の時間から用意しろってのは無理ですよ。小切手を切ってもいいが、どうせ昼間は金融機関に足を運べないんじゃないんですか?こういう部屋を作るような生活をしてると…」
「そうですか、困りましたね。現金で一括返済をお願いしたいと思っていたのですが…。じゃあ、栗原さん。あなたが彼女の代わりに私とゲームをして借金を返済するって言うのはどうです?」
「ゲーム?」
「はい、ゲームです」
彼は、そう言うと、奥の方から紙コップを持ってきて、テーブルの上に逆さにして置いた。
そして、おもむろにポケットの中から10円玉を7枚取り出すと、テーブルの上に無造作に並べた。
「セブン・スターって知ってますか?」
「タバコの銘柄ですか?」
「またまた、御冗談を……。単純なゲームです。この7枚の10円玉を1枚ずつコップに入れてひっくり返して、7枚のコインのうち、表と裏のどちらが多く出るかを予想するゲームです。もし、あなたが、私に勝った場合には、1ゲーム勝つ度に1千万円差し上げましょう」 |
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