横目で理香を見ると、彼女の顔が青ざめている。
僕も彼女同様に、直感的にヤバイ状況に陥った事を悟った。
理香は、ビビって声も出ないようだ。
しばらくすると、僕の後ろに立っていた奴が、僕の顔の横に自分の顔を近づけ、話し出した。
「君は、この女性の知り合いかな?」
「はい。て、言うか、あまり深い関係ではありませんが……」
「上司から彼女を連れて来るように命じられているのだが、君もいっしょに来てくれないか?そうすれば、君らの命の保障はする。どうかね?」
どうかねって、いやだって言えるわけないじゃん。こんな状況じゃ。僕は脊髄反射で返事した。
「は、はい。わかりました」
彼の問いかけに素直に返答すると、おそるおそる振り返って声の主を確かめた。
アルマーニのスーツを身にまとい、腕にパテックフィリップの時計をつけた紳士が、部下らしき男を1人伴なって立っていた。
もちろん、2人とも右手にピストルを握りしめている。理香をつれて二人を振り切って逃げるのはどう見ても無理だ。
部下の方は、僕が単独で逃げ出すことも考えていたらしい。僕にピストルを突きつけている男から2、3歩下がってピストルを構えている。この状況だと、店の出口まで走る間に確実に撃たれるだろう。
「さ、じゃあ指示通り動いてもらおう。とりあえず立ちたまえ」 |
|