彼女は、僕らを店内の中央の席へ案内してくれた。
僕らが席につくと、マダムは手に持っていたメニューを僕らに手渡し、店の奥に戻ってしまった。気のせいか、マダムも余裕がないように見える。客足が伸びて繁盛するのはいいけど、そのせいでなじみのお客さんが飛んでしまったりしなければいいけど。
「ケンチャン、何にする」
「そうね、海鮮パスタにしようかな……」
「じゃあ、僕も同じやつ」
僕とヤスオのメニューがちょうど決まった頃に。マダムが戻って来た。
「すみません、ちょうど奥の席が御用意できましたが、どうされますか?」
「そうですか。じゃあ、お願いできますか」
「それでは、御案内いたします」
僕とヤスオは、マダムにメニューを預けて、店の奥のオープンガーデンに移動した。
そして席に着くとマダムに料理の注文をはじめた。
「じゃあ、海鮮パスタを2つ」
「ワインはいかがいたしますか?」
「おすすめの物を」
マダムは、僕らのオーダーを確認すると、また店の方に戻って行った。
「ふう、やれやれだな。まさかこんなに客が多いとは思わなかった。ヤスオ、久々の美森はどうよ?」
「う〜ん。そうね……。5年ぶりに戻って来たけど、ガタガタって感じだね。美森にかぎらず、地方はどこもこうなんだろうけど」
「だな……。俺、実家に戻ったら近所の家が数軒なくなって、マンションになってたよ」
「地味に金持ってるやつらが、地方の土地を買いあさって開発しはじめてんだね」
「くぅ〜。キツイネ。また地上げが始まるのかな?」
「それはそうと、ケンチャン。カラープログラムを暴走させた犯人の目星はついたの?」
「いや〜。まったく。とりあえず、お前が犯人じゃないという確信はある」
「僕はそんなことしないよ」
「怒るなよ。冗談だって。というか、犯人は1人じゃない」 |
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