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ヤスオは、衣料店の中に入っていくと上着を買って戻って来た。そして、買ってきた服を京介に手渡した。

「ありがとう、ヤスオ」

「これも領収書が落ちるよね」

「まあ、仕方ないよな」

京介は、ヤスオにそういうと、車内で着替えた。そうこうしていると、いつのまにかホテルに辿り着いた。僕らは、料金を支払うとタクシーを降りホテルに入った。口止め料代わりに、つり銭は受け取らなかった。

「とりあえず、佐藤と康市には僕から連絡を入れておく。今日はこのまま休もう」

「そうだね、さすがに疲れた。体がバラバラになりそうだ」

僕らは、素早くチェックインすると、各自自分の部屋に入った。やっぱビジネスホテルは、少し狭いな。

スーツをぬいで、浴室に行くとシャワーを浴びた。あちこちすりむいたり、傷ができてるせいか、熱いお湯が体にあたると、すごくしみる。しかし、周は凄かったな。もし、オヤジさんが来てくれなかったら僕らは殺されていたかもしれない。

まあ、少し痛いけどパープル・パーツも戻って来たし結果オーライってとこか。蛇口を閉め、タオルで体を拭くと、トランクスを履きパンツ1枚でベットに横になった。備え付けの浴衣は着る気ににはなれなかった。

テレビをつけると、もう11時を回っている。ニュース番組は、薬にも毒にもならないニュースが次々と流れていた。相変わらず日本は平和らしいな。その中で、濃い一日を送ったと思う。

唯一、人間らしい瞬間といえば、飯を食ったことと、麻美のことを考えたことだけだろうか。

そう思った瞬間、アキラと麻美の事が、突然心の奥から湧き上がってきた。

「麻美も結婚するのか…」

誰もいない部屋で1人つぶやいた。京介は幸せな家庭を築いているし、佐藤もそれに続く。へタレのヤスオは彼女ができた。やれやれ、僕だけが1人ぼっちか。

せめて、オヤジとオフクロが生きてくれていたら、少しは気分もまぎれるんだろうが…。

でも、結局僕は自分が1番好きな男の人なんだな。また、天井に向かってつぶやいた。

「あの時、アキラを殺しておけばよかった」

「あの時、アキラを殺しておけばよかった」

「あの時、アキラを殺しておけばよかった」

何度同じ言葉を繰り返しただろうか。

しばらくすると、視界が暗くなり僕は眠りについた。


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