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次の瞬間、京介の顔が歪み地面にうずくまった。

一瞬の動作で確認出来なかったが、周が京介の顔をなでただけで、京介はうずくまって動けなくなってしまった。

「発勁(はっけい)って知ってる? おじさん。軽くなでられたみたいに見えるけど、フルパワーで殴られたよりきっついんだよね。これ」

京介は立ち上がれず、うめいていた。

「全く、日本人は欲しいものがあると何でも力ずくで手に入れようとしやがる。それで、そっちはどうする。お金用意してもらえます?」

彼が僕にそう言うと、少し遠巻きに見ていた彼の仲間達が笑った。

「どうした。どうすんの?もう、めんどくさいから掛かって来いよ。リーマンの解体ショーの始まりか?」

僕は彼の挑発に乗らず冷静に話を進めようとした。

「悪いけど、俺は喧嘩する気はないんだ。ただ、それを渡して貰いたいだけなんだ」

「ウルセヨ〜〜〜〜」

周が僕の方に走り込んで来て、上段蹴りを繰り出してきた。

「やるじゃない? こいつはどう」

1発目はよけた、しかし2発目の足払いをもろにくらった。

倒れこんだ僕の頭の上から周が踏みつけた。横を見ると京介が鼻から大量に血を噴出していた。

周の動作があまりに早かったので気付かなかったが、おそらく手の甲で顔面をまともにを殴られたのだろう。

彼は、多分幼い頃から拳法をマスターしているのだろう。丸腰だと、僕らが到底かなう相手じゃない。

「どうする、おじさん〜警察に訴えるとか言う前に、本牧の魚の餌になるかもよ?」

やはり、あの時ヤスオじゃなく康市をチョイスしておけばよかった。決定的な人選ミスで御座います。とかいってもはじまらないか。なんとかしないと。


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