エレベーターに全員乗り込むと、京介が閉ボタンを押した。
なんだか狭いな。あれ、ヤスオと冴島もいっしょに来てるじゃないか。機密保護を考えると二人を連れていくのはまずいんだが。
いや、ラボからナノロボットを持ち出したのがヤスオだったわけだから、懇意にしている冴島にも、話はいずれ伝わるだろう。まあこうなったら仕方がない。
地下2階のラボ(研究室)に着くと、ラボの研究員が入り口のドアの付近で待っていてくれた。
「とりあえずCOLORプログラムの一部を解析できました。詳細は中で博士から聞いてください。あの……栗原さん、彼らは?」
研究員の一人が、冴島とヤスオを見て怪訝な顔をした。
「かまいません。この件の重要な情報を握っていますので同行させました。とにかく説明をお願いします」
研究員はしぶしぶとした顔で、IDカードリーダーにカードを通して、ドアを開けてくれた。ラボの中に進むと、所長が白衣を着て、パソコンに向かっていた。
「所長、レッドパーツについて何がわかったんですか?」
「それはそうと、河島君はどうしたんだ? それから部外者を入れてもらうと困るんだが」
所長は、こちらを振り向くと、ヤスオと冴島を一瞥した。
「ゴリさんは今、山形に出張しています。この二人は、ナノロボットの流出に関して重要な情報を握っているので連れてきました。僕の判断ですが、ゴリさんには後で連絡しておきます。それより説明をお願いします」
「うむ、分かった」
所長の白鳥明は、僕のオヤジのブレーンだった人だ。僕は幼い頃から交流がある。
でも、最近はさすがに年のせいか頭もハゲて、まるで鉄腕アトムに出てきたお茶の水博士みたいになってきた。
みんなは、彼の事をバード博士と呼んでいる。噂によると、亡くなった僕のオヤジがつけたニックネームらしい。
「まずは説明を受ける前にお話した方がいいかと。バード博士、ナノロボットが流出したのは人為的なものでした。その経緯を説明します」
「今は、それどころじゃないんだ。早くこっちに来てくれ」
彼は、そう言うと僕らをラボの奥の部屋へ案内してくれた。 |
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