無料オンライン小説 COLOR 心海に眠る友情と劣等感



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僕は、グラスを握ってみんなの顔を見まわした。

「とりあえず、乾杯しよう。ほら、腹へってるから喧嘩っぱやくなるんだ」

「そうですね。僕と賢一さんは、朝からまともに食ってませんからね」

康市は自分のお腹をさすりながら言った。

「そういえば、京介と佐藤のお祝いしてなかったよな。せっかくだから、佐藤君の婚約と京介の結婚を祝って乾杯しますか。かんぱい〜」

「かんぱい〜」

僕が乾杯の音頭をとると、みんなは互いにグラスを重ねて乾杯した。

何だか場の空気がなごんだ。

そう言えば、こいつらとこうやって飯を食うのも3ヶ月ぶりだな。感情に浸っていると後の席から変なラップが聞こえてきた。誰だよ、せっかくなごんだのに、へたくそなラップかましやがって。リズム感バラバラで、すげえうぜえ。

「YO-YO、好きな料理はイタリアン、そして君はス・テ・キ・ヤ・ン」

「へ?」

みんなが聞き覚えのあるラップだった。みんなグラスを持ったまま顔を見合わせて、ラップの声の主を探すと、高校生の時のクラスメイトだった。忘れもしないアホのマサハルが変なラップをやっていた。

よくみると向かいの席にペコちゃんが座っている。

なんでまたペコちゃんが、こんなとこに。野郎〜ペコちゃんに手を出しやがって。まあでも僕の彼女ってわけじゃないしな。

無視するか。いや、やっぱり無視できない。ITコンサルティングのマドンナに、妙な虫がつきそうなんだ。マサハルにペコちゃんが、あんなことやこんなことされて、妙な画像が流出して、ネットで叩かれたなんて話になったら困るからな。

害虫駆除はきちんとしておかないとね。大義名分を言い聞かせながら席を立つと、僕は彼の近くに歩みよった。

「おい、マサハル」

「誰だ、お前」

マサハルは、僕のことに気づかなかったらしい。無理もない。昔、京介達とつるんでた時代のことはすっかり忘却の彼方だろうからな。僕がスーツ着てるなんて想像もできないだろう。


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