京介は、しきりに中庭を見回している。佐藤も康市もおちつかない様子だった。
「みんな、落ち着けよ。有り金、全部ふんだくられるような高い店じゃないから」
僕がそう言うと、みんな苦笑した。たしかに、初めて来た人には、デラックスすぎて、落ち着かない雰囲気かもしれない。噴水の方に目をやるとライオンが勢いよく水を出している。
ん、何か光ったぞ。ライオンの下の方に埋め込まれたエンブレムらしきものが一瞬だが金色に輝いた。なんだろう。セキュリティのための隠しカメラだろうか。
気がつくとマダムがメニューを持って立っていた。
「メニュー、どうぞ。オーダーお決まりでしたら承りますが……」
「すみません、とりあえず海の幸のピッツアと、合うようなワインを持ってきてもらえますか。後は、ピッツアつまみながら追々オーダーするんで…」
「ワインは、シャトー・レ・グラーヴ・エルヴェ・アン・フュ・ド・シェーヌ 1999が合うかと思いますが、よろしいですか?」
「おまかせします」
彼女は、少し微笑みながらオーダーメニューを繰り返した。
「それでは、今しばらくお待ち下さい。」
彼女は軽く会釈してテーブルを離れた。
マダムが僕らの席から離れると同時に、みんなはため息をついた。
佐藤がメガネを直した後、僕に話しかけてきた。
「賢一さん、乾杯の前からなんなんですけど、COLORプログラムって、一体何なんですか? 日本のフィクサーが管理するくらいの代物ですから、大変なものなんでしょうけど」
「ちょっと待てよ。僕だって混乱してるんだから……話を整理するよ。何から話したらいいかな」
「富国電気で緊急役員会かなにかあったんだろう? あそこから、話せばいいんじゃないの」
京介がタバコに火をつけながら、話を割った。 |
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