ゴリは、僕らのところまで来ると怒った顔をして話しだした。
「だからトラップがあるかもしれんと言っただろう。お前らが外したあのセンサーはダミーなんだ。上の木のセンサーの電源が切れたら、お前達の前方にあるトラップが木の根元を狙撃する仕掛けになっていたんだ。正面のトラップは俺が壊して来たから、もう安全だ。さあ、早く戻ろう」
起き上がろうとしたが、体が震えて立ち上がれない。おまけに声も出なくなってしまった。康市も硬直して動けなくなっていた。
僕らの状況を察したゴリは、俺たちの背中をやさしくさすってくれた。
「対人地雷じゃなくてよかった。そんなのが仕掛けられていたら、吹っ飛ばされてるところだったぞ。ツイてると思え」
僕と康市は、声をあげて泣いた。
生きている世界が違うんだ。僕は、日本という国で安全に管理されて育った人間だったんだという事を改めて実感した。それと、同時に自分がどれほど無力で無知な人間だったのかという事に気付いた。
きっと、康市もそうだろう。僕らはギャングや暴走族仲間と徒党を組み、町ではカッコつけて肩で風切って歩いていたが、それはこの国の大人達が甘えさせてくれたからだ。
しょせん日本の不良少年なんてアマちゃん達の吹き溜まりなんだ。もし僕が共産圏の国に生まれていたら、銃殺刑になっていてもおかしくなかっただろう。
僕は弱い人間で、自分一人じゃ何も出来ない愚か者だったんだ。
ゴリが背中をさすってくれたせいか興奮が醒めて、体がほぐれてきた。康市も緊張がとけたようだ。ゆっくりと立ち上がった。
「せっかくだから、水を補給していこう」
ゴリが水飲み場の方に歩き出したので、僕らもおそるおそる後に続いた。
水飲み場に戻るとゴリが、お地蔵さんに手を合わせた。
今度は水が出ているところに両手を合わせて水を手のひらですくって飲み始めた。僕と康市もゴリのあとに続き、両手を合わせて水を飲んだ。 |
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