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こらえきれずに、二人で笑った。二人とも極度の緊張のせいか、くだらない事で笑いがこみあげてきている。ヤバイな。きっと、精神的にかなりまいっているのだろう。

というか、視覚が働かない分、感覚が鋭敏になってるんだろう。本能が生命の危険を必死に知らせている。

「康市、やっぱここから先はヤバイみたいだ。帰るなら今のうちに帰った方がいいぞ」

沈黙に耐えかねて、僕が言葉を放った。

「そっすか? じゃあ、帰ろうかな〜。そういえば、ドラゴンボール全巻読破してないんですよ。こち亀の最終回も見たいし。それじゃ」

「ちょ、ちょ、ちょっと、待ちんさい」

僕は慌てて、康市の袖を引っ張った。

「賢一さん、何するんすか。引っ張らないでくださいよ」

「やっぱ帰るな。俺だってドラゴンボール読破してないんだよ。確かフリーザ出てきた辺りで止まってるし。こち亀の最終回見たいし」

「痛いっすよ、離してください」

「頼む、帰るのは勘弁してくれ。今の私、とても怖いの……」

「何で急にへタレになってるんですか。俺だってすげえ怖いっすよ。て、いうか、ここまで来たら一人で帰れないから、いっしょにいますよ。分かりましたから、とりあえず離してください」

「ありがとう。あのさ、康市は、この辺り来たことあんの?」

「あるわけないですよ。地元の人間でもこんな山深いとこまで入ったりしません。さっき、すごい古い看板が出てたでしょう? 何十年も人が入ったことがない証拠ですよ」

「なるほどな」

「そういえば、プロの登山家とか、ロッククライマーでも二の岳に登るって話は聞かないですよ。ピクニックとか登山なら、ふつう一ノ岳に登りますからね」

「そうだな。この先、崖崩れとかもあるんだろうな。ヤベえとこに来ちまったな」


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