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悪夢の夜明け

目の前の光景が、現実のものとは思いたくなかった。

足元から震えが這い上がるにつれて、アルコールが抜けていく。軽いめまいを覚えた時、ようやく驚愕の事態を受け入れることができた。

未来都市の一角のような交差点は、完全に破壊しつくされていた。いたる所に並んでいた幾何学的な造形物は、衝突した車のせいで、無残に飛び散っていた。

何より恐ろしかったのは、暗闇の中から響いてくる生存者の声だった。目を凝らしてみると、まるで罠にかかった魚のように、つぶれかけた車の中で、大勢の人がうめいているのが分かる。

肌の外から刺すような冷気がしみてくる。冷静と興奮が入り混じる中、気がつくと僕は、つぶれた車の側に走り寄っていた。

ボンネットが完全に潰れて、フロントガラスに蜘蛛の巣のようなひびが入っている。中を覗いてみる。見えづらいが、運転席と助手席のエアバックが膨らんでいるのがわかる。

フレームがもともと頑丈に設計されているのと、エアバックがうまく作動したおかげだろう。車自体はそんなに損傷がない。

だが、ドアガラスにはべっとりと血がこびリついていた。シートベルトをしていなくて、ドアに激しく頭をぶつけたのだろうか。思わず後ずさりしそうになった。

「大丈夫ですか? しっかりしてください」運転席のガラスを軽くノックする。

助手席に座っている女性は動く気配がなかった。運転席に座っている中年男性が、搾り出すような声を出すのが聞こえた。

「ダ・イ……大丈夫だ。横に妻がいる、助けてくれ」

慌ててドアを開けようとするが、ドアロックが掛かっていて開かない。

「ドアロックを開けて下さい」

ドアを叩きながら、呼びかけた。だが、車内から返事は返ってこなかった。

「京介、そっちはどうだ」


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