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僕だってそうだ。会社を立ち上げた頃は、君と同じ考えを持っていた。がむしゃらになって金を手に入れた。

ぶっちゃけ、この歳で普通の人が一生涯働いても手に出来ないくらいの金と力を手に入れた。でも、家族は誰一人いない。金で買えないものは何一つ持ってないんだよ。

それに、いざ金を手に入れてみたら、ほしいものなんてそうそうないことに気づいた。一番ほしいかったのは、家族と一緒に、穏やかな心で普通に暮らせることだったんだ。きれいごとじゃなくて、金じゃ手にはいらないものって本当にあるんだよ。

ここにいる信頼出来る仲間も、金を積んで手に入れたものじゃないだろう」

「そうですね。でも、金でつながってない部分があるといったら嘘になりませんか?」

「まだわかってないようだな。金より強いつながりが、僕たちの会社にはある。口で説明しても分からないだろうけどね。そうだな……。お前は、たこ焼き屋の姉ちゃんのどこに惚れた? あの子が金を持っているとはとても思えないが。それとも、金であの子の心が買えるとでも思っているのか?」

「僕は彼女のことが大好きです。こんな気持ちは生まれてはじめてです。彼女のために今日の仕事もがんばったんです。でもやはり金がほしいです。金で彼女の仕事を手伝ってあげたい。あんなシャッターばかり下りた商店街で商売なんかしてほしくない。彼女の笑顔で、僕はどれだけ働くのが楽しみになったことか。彼女の笑顔がもっと輝く場所に店を出してあげたいんです。そのために金がほしいんです」

「それが、俺のいってる大義ってやつだよ。よく考えてみろ。金は目的をかなえるための手段じゃないか。それでいいんだ。誰かのために働くのって、熱くなれるだろ?その気持ちを忘れないようにしような」

「ありがとうございます」

佐藤は、涙をしきりにハンカチで拭っていた。きっと彼は、大きな疑問の答えを得たのだろう。人が何故生まれて、何所に向かわなければ行けないと言うことだ。

みんな物心をついた後、人生の中で一度は真剣に考える機会に遭遇すると思う。

なぜ人間は生きなければいけないのか?ということを。
幸福とは何か?ということを。

答えは簡単だ。そんなものに理由なんてない。人生の99%は苦しみだ。

でも残りの1%の幸福や楽しみのために、必死になって、明日の朝日を目指すのだ。そしてその繰り返しの中で、ハードルを越えて、ゴールを目指す。


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