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確信犯

「いやーしかし厳しいプレゼンでしたね。中野社長があんな手にでてくるとは思ってもみなかったですよ。いい勉強になりました」

佐藤が、しきりにハンカチで額の汗を拭いている。

「まあ、結果オーライだが、とりあえず社則を変えないといけないな。職場で無修正動画は見ないようにとか」京介がそういって、康市をこづいた。

「康市、心配すんな。3か月分減給で済ませてやるから」

「ええええ! カンベンしてくださいよ。プレゼンのDVD作った残業代もらってないんですから」

「冗談だよ。でも今度から気をつけろよ。今回は何とかなったけど、些細なミスが取り返しのつかないことにつながることもある。官僚がP2Pで機密情報を流出させた時みたいに、作文読んで、夕方のニュースに出るくらいじゃすまないこともあるからな。もれなく拘置所にご宿泊なんてことになることだって十分ある」

「気をつけます。あんな冷や冷やする思いはしたくないっすから」思わぬハプニングがあったが、みんなそれなりに得るものはあったようだ。

「とにかくお疲れ様。10階の社員食堂で少し休んでいかないか」僕がそういうと、みんな何のためらいもなくエレベーターに乗った。

社員食堂につくと、今日プレゼンに参加した他の業者が陣取っていた。僕が彼らの近くのテーブルに着くと、みんな黙って席に着いた。

「今日はお疲れ様でした」佐藤が口を割った。

「お疲れ様。ところでさ、今日のプレゼンは、ちょっとした秘密があったんだ」

「は?」

「彼らの事だよ」僕がそう言うと、みんな首をかしげた。

「なんてことはない。要するに、始めからここにいる業者の中で、どこが受注しても、みんなに利益分配できるように、協定を結んでいたんだ。まあ、早い話が談合ですね〜。お分かりかな?」

「なるほど、保険かけてたってわけね」京介が呆れた声を出した。

「ただ、予想外にスカイネットが強敵になっちゃったからさ。うちが是が非でも押さえにいかないとまずくなったわけ」

「ふ〜ん、なるほど、そう言うことですか。それであんなに焦ってたわけね」京介は頬杖をついて微笑んだ。


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