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「ゲロだけじゃすませねえぞ。内臓吐くまで、ボコボコにしてやんぞ、コラ」

「京介、よせ」

僕が止めると、アキラは僕たちをにらみつけたまま、吐き捨てるように言葉を続けた。

「お前ら、あの時のこと覚えてるか。補修工事のバイトの面接の時だよ。あの時、どんな目で俺を見てた?俺は忘れねえぞ。お前たちは、俺を邪魔者扱いする目で見てたよな。お前が降りてくれたら助かるって目をしてたよな。俺は忘れねえぞ。お前たちは、自分の利益の為に俺を切り捨てたんだ。汚ねえのはどっちだ。俺を責められる筋合いがあんのかよ」

「まあ、確かにそうかもしれないけど。だったら、俺たちに文句言えばすむことじゃねえのか? どっちにしろ、お前のやった事は間違ってんだよ」そう言って、京介はアキラの腹に蹴りを入れた。再びむせて、アキラがゲロを吐いた。

「アキラ、お前はどうするんだ。もうこの街じゃ生きていけないぞ。ずいぶん派手にやらかしすぎたからな。警察もお前が殺されるのを見逃すつもりらしい。ここを逃げたとしても、この街にいたら、他の連中からマジで殺されんぞ」

僕の言葉に、アキラは目を細めた。

「どうしようもねえよ。殺したきゃ殺せ」

「そんじゃま、そうさせてもらおうか」京介がトカレフを出した。僕は、無言で止めた。

「殺せよ。どうせもう、まっとうな生き方なんて出来ねえし、裏の世界でも生きていけねえなら、死ぬしかねえよな」

「ずいぶん、あきらめがいいんだな」

「賢一みたいに、俺は要領がよくねえからな。ギャングで成功したと思って有頂天になってたら、このザマヨ。もうどうしようもねえさ」

アキラは、言葉を続けた。

「本当はさ、補修工事の面接の後な、お前らがマジメに働いてるから俺もあちこち面接に行ったんだ。でもこのご時世だろう、おまけに俺達みたいな適当に高校出ただけの人間に、仕事をくれる奴なんて滅多にいねえ訳で。

とりあえず高校の頃の後輩とドミノバーガーの入り口の前で、ラジカセ聞きながら、うだうだたむろってたら、中から店長が封筒を持って飛び出てきて、これやるから向こう行ってくれて言われた訳よ。

初めはむかついたけど封筒の中を見たら二万入っていた訳よ。それで味しめて、車のパーツかっぱらってるチンピラとか集めてギャング作ったら、このザマヨ。もうあきらめたよ。やれよ、さあ。警察もおとがめなしなんだろ。トカレフで人が撃てるなんて滅多にねえぞ。ほら、やれよ」

僕も京介も何も言えなかった。アキラがここまで落ちたのは僕たちのせいなのだからだ。それになにより、仲間を平気で切り捨てた自分たちが情けなかった。そして、この場のつかの間の沈黙がやけに重たかった。


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